- 理系なんですけど、総合職の試験を受験できますか?
- そもそもどんな試験内容ですか?
- 職種をもっと知りたい
こんな風に「理系大学の出身」で総合職に興味のある受験生は多いと思います。
そんな受験生のために、この記事では理系の受験生が受験すべき国家総合職の試験についてかみ砕いて解説します。
記事の内容
- 基礎知識
- 試験の内容
- 試験の流れ
などを中心に解説しています。
国家総合職の試験を受予定の人は、この記事を読んでいただければ理系の試験内容について知識を深めることができます。
もくじ
【国家公務員】総合職(技術=理系職)の基礎知識
国家公務員総合職(以下「総合職」)の理系の職員とはどんなものかご存知でしょうか?
よく理系と言われていますが、総合職の試験では「技術職」と呼ばれています。
人事院では、
「これから の日本をさらに豊かなものとしていくために、また、複雑・高度化した行政課題に対応していくため には、理工農学系の専門知識を生かして、課題を発見し、解決していける人材が不可欠です。 」
※出典:人事院公式ページより一部抜粋
という風に発言しています。
つまり、大学で土木や農学で学んだ知識を日本のために活かす仕事こそ、総合職の技術系職員となりますね。
【国家公務員】総合職(技術=理系職)の試験区分
総合職(理系職)の試験区分は9つの区分に分かれています。
非常に細かく分かれているので、詳細に解説していきますね。
土木職(工学区分)
主な採用先
- 国土交通省
- 農林水産省
- 環境省
- 経済産業省
国土交通省
国土交通省の総合職技術系職員は、幹部候補として、ある特定の業務分野に重点的に従事し専門性を伸ばす(スペシャリストとなる)とともに、他の分野にも従事します。
また、総合的な視野からの企画立案能力を伸ばす(ゼネラリストとなる)ように、業務経験を積んでいきます。
具体的な仕事内容としては、
- 港湾整備や河川事業
- 道路整備などのインフラ整備に道路の路線決定
- 地元住民との交渉
- 業者への発注
などなど。
その他にも、地方の出先機関や他の機関と本省を頻繁に行き来し調整を図ることもありますね。
本省では、開発途上国への開発計画策定や技術支援を通じて国際的な業務に携わっていきます。
農林水産省
農林水産庁では、水産庁や林野庁があります。
農林水産庁には6つの内部部局があり、以下のとおりです。
- 大臣官房
- 総合食料局
- 消費・安全局
- 生産局
- 経営局
- 農林振興局
これらに分かれて、幹部職員として専門的な業務にあたります。
環境省
環境省は、世界を舞台にした国際交渉から、国内で現場に寄り添う仕事まで様々な場面で活躍します。
また「環境と成長の好循環」の実現を図っています。
「環境」を軸にして仕事ができる唯一の省と言えますね。
主な仕事内容
- 大気汚染防止法等の法律の企画
- 立案や改正
- 工場・事業所の排ガス規制
経済産業省
経済産業省では、採用後に事務系・技術系に関係なく配属が行われるのも特徴。
主な具体的な仕事内容としては、
- 技術関連施策
- 地球環境問題
- 資源エネルギー行政
などに始まり、若いうちから数十億円規模の国家プロジェクトを企画立案に携わることになります。
建築職(工学区分)
主な採用先
- 国土交通省
- 環境省など
国土交通省
本省では、区分所有マンションの立替を円滑に進めるための法案の整備や、内閣が進める都市再生事業などに携わります。
主な仕事内容は、
- 建築物の安全性等に関する業務
- 建築物の環境対策に関する業務
- 住宅のセーフティネットに関する業務
- 住宅市場の条件整備に関する業務
などが挙げれられます。
環境省
環境省では、環境基本法に基づいて、大気汚染に関わる環境基準の策定などを行います。
調査廃棄物・リサイクル問題に関連しての産業廃棄物の処理にかかわる各種基準の設定の業務に携わりますね。
主な仕事内容としては、
- 気候変動対策
- 海洋プラスチックごみ対策
- 生物多様性保全と国立公園
- 福島の復興再生と未来
- 環境で地域を元気にする取組
などがあります。

機械職(工学区分)
主な採用先
- 国土交通省
- 経済産業省(特許庁)など
国土交通省
本省では、対外的には船舶の安全基準や海洋汚染防止に関わる条約作りなどの国際的な業務を主としています。
また先進安全自動車の開発・普及の促進業務などに携わることになりますね。
主な仕事内容としては、
- 道路や河川
- ダム等の社会資本の維持管理に必要な除雪機械
- ゲート設備
- 災害対策用機械などの整備計画の立案や技術開発
などになります。
豪雪地域などで見られる除雪作業車などは、国土交通省が所有しています。
経済産業省(特許庁)
特許庁は日本国民が特許を申請する際に、受理してくれる組織になります。
実は、経済産業省の外局になるんですよね。
特許審査官として様々な具体的案件に対して、特許権を付与するか否かの決定を行う審査業務などが含まれます。
主な仕事内容としては、
- 特許情報の利用促進を図る情報部門、国際機関等との協力を担当する業務
- 機械設備の計画・設計・見積・施工・工事管理・維持管理などの業務
などがあります。
電気・電子職(工学区分)
主な採用先
- 総務省
- 国土交通省
- 経済産業省(特許庁)
総務省
総務省では、情報通信技術に関する多くの制度を所管しています。
主に電気通信行政に携わり、社会資本として大きな役割を果たしているインターネットなどの情報通信ネットワークへの不正侵入や不正利用を防ぐ役割を担います。
また、ネットワークの安全・信頼性向上のために各種施策に携わります。
主な仕事内容は下記のとおり。
- 通信・放送関係業界を規律
- 先端的な研究開発
- 情報通信技術の利活用の推進
- 5Gや4K/8Kなど我が国の通信・放送方式の海外展開・国際標準化
- 多種多様な施策を推進
国土交通省
国土交通省では、道路や河川、ダム等の社会資本の機能が有効に発揮されるために必要なシステムの設計などが主な仕事です。
また積算、保守など、鉄道の事故収集や分析、再発防止策の策定等に携わります。
具体的な仕事内容としては、
- 維持管理に必要な除雪機械
- ゲート設備
- AHS のシステム設計や関係省庁との調整
- 普及策の規格等を通じITS の業務推進
- 災害対策用機械などの整備計画の立案や技術開発
などがありますね。
数学職・情報職・物理職(数理科学・物理・地球科学区分)
主な採用先
- 総務省
- 厚生労働省
- 気象庁
- 経済産業省(特許庁)
厚生労働省
実は、厚生労働省の採用が最も多いんですよね。
これは、厚生労働省では社会保障制度の課題を解決する際に、数理科学の専門知識を駆使して科学的根拠に基づく施策を推進することが必要となるからです。
主な仕事内容は、
- 年金のマクロ経済スライドの数理的なシミュレーション
- 雇用や失業に関する統計の企画や解析
- 医療保険制度の企画・立案に不可欠な医療費の分析や将来設計など
などがあります。

総務省(統計局)
総務省統計局では、国勢調査などが有名ですよね。
統計に関わる行政機能を担っており、一般職技術系行政官として統計行政を担う人材を必要としています。
主な仕事内容は、
- その他国勢の基本に関する統計調査の企画・実施・公表
- 情報処理技術を活用した統計情報の提供
などがあります。
気象庁
気象庁では、全国20 ヶ所にある気象レーダーの運用業務に従事しています。
近年では、自然災害が多発し気象庁の役割が大きくなっています。

主な仕事内容は、
- 地震活動について解説する資料を作成する業務
- 緊急地震速報の提供開始
- 自然災害の被害を軽減させるための制度の導入
などがあります。
化学職
主な採用先
- 環境省
- 厚生労働省
- 国税庁
- 経済産業省(特許庁)など
環境省
環境省では、工場のばい煙の規制や環境中の様々な化学物質の濃度の調査などを行います。
また、環境保護事業の法制化などに携わっていきます。
主な仕事内容としては、
- 国民の生命・健康に直結する政策の企画立案や遂行
- 労働者の安全と健康を守るためにさまざまな規制
などがあります。
国税庁
国税庁は、国税に関する賦課及び徴収等を担当する行政機関です。
国税には様々な種類がありますが、鑑定官が扱っている「酒税」や「揮発油税」といった物資に課せられる税について大きく関わっています。
課税判断をする上で、アルコール度数や比重など技術的な事項が重要となります。
主な仕事内容としては、
- 他省庁や関係組織等との協議や
- 国際会議における酒類に係る議論への参画
- 諸外国の分析鑑定方法・酒類製造技術等の情報収集等
- 行政施策の企画・立案
などが挙げられます。
農学職・水産職(農業科学・水産区分)
主な採用先
- 農林水産省
- 水産庁
水産庁
水産庁では、水産物の安定供給の確保及び水産業の健全な発展の推進等を図っています。
また水産資源の維持 管理への取組、各種漁業の許可・調整、様々な調査・研究開発への支援も主な業務。
主な仕事内容は、
- 漁業に利用可能な新技術の調査、研究、普及の推進
- 漁船や漁業用機器の検査
- 漁業取締船や調査船等水産庁所属船舶の設計・施工監督
- 漁船の建改造の許認可
- 漁船関連の国際基準の策定作業への参加
などがあります。
造園職・砂防職・林学職(森林・自然環境区分)
主な仕事先
- 国土交通省
- 環境省
- 農林水産省など
国土交通省
国土交通省では、街づくりの中での「緑」という観点から緑化事業に携わります。
道路に生えている植栽などの管理を行なっていますね。
主な仕事内容は、
- 国営公園の管理・運営
- 都市公園の支援
- 都市の緑の保全・管理
- 良好な景観作り
- 都市農地の保全・活用
などがあります。
【国家公務員】総合職(技術=理系職員)の試験内容
総合職の種類は豊富にあり、その試験内容も様々。
そこで、実際に人事院で公式に掲載されている情報をもとに簡単に解説していきます。
情報に関しては、2022年度(大卒程度)を基にしています。
ちなみに基礎能力試験などは全区分共通となっているため省略します。
気になる方は下記の記事をご覧ください。
全体的な試験内容はこちら。
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官庁訪問についてはこちら。
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ちなみに、それぞれの区分の内容が膨大になるためこの記事では工学区分に焦点を当てて解説しています。
その他の区分については、下記のボタンをクリックしてください。
工学区分
基礎知識
- 中身は主に高校~大学2年次の学習範囲の数学・物理で構成されている
- 計算問題の途中式や語句・現象の説明を書かせるタイプになっている
- 専門試験のボーダーラインは7割程度
- 工学基礎以外は頻出分野に絞った学習が必要
専門試験(多肢択一式)
💡155題出題 40題解答
必須問題
工学に関する基礎[数学及び物理の基礎的な知識に基づく工学的、手法の応用能力を問うもの等]の計20題
選択問題
次の27科目(各5題)から4科目、5科目又は6科目を選択し、その20~30題のうちから任意の計20題解答
1.技術論[技術の歴史、技術と社会との関連等]、
2.基礎化学、3.工学基礎実験、4.情報基礎、5.電磁気学、
6.電気工学、7.材料力学[機械系]、8.流体力学[機械系]、
9.構造力学(土木)・土木材料・土木施工、
10.土質力学・水理学、11.環境工学(土木)・衛生工学、
12.構造力学(建築)、13.建築構造・建築材料・建築施工、
14.計測工学・制御工学、15.電子工学、16.通信工学、
17.機械力学、18.熱力学・熱機関[機械系]、
19.土木計画、20.建築計画・建築法規・建築設備、
21.建築史・都市計画、
22.材料工学(材料科学)[材料物理、材料化学]、
23.材料工学(金属材料・無機材料)、
24.原子力工学(原子核・放射線)、
25.原子力工学(原子炉・核燃料サイクル)、
26.船舶海洋工学(流体)[船体復原性、船体抵抗・推進、船体運動]、
27.船舶海洋工学(構造)[船体強度・振動、船舶設計・艤装]
(注)8(流体力学[機械系])と10(土質力学・水理学)の同時選択不可。
7(材料力学[機械系])と9(構造力学(土木)・土木材料・土木施工)と 12(構造力学(建築))の3科目のうち、2科目又は3科目の同時選択不可。
専門試験(記述式)
💡選択問題 1題又は2題 次の27科目から出題
選択問題
・回答題数
ア.1(建築設計)又は2(都市設計)を選択する場合は、その1科目(1題)のみを選択解答
イ.ア以外の場合は、2科目から各1題、計2題を選択解答
(注)2題以上出題される科目にあっては、そのうち1題のみ選択可。
1.建築設計①、2.都市設計①、3.計測工学①、4.制御工学②、
5.電磁気学・電気回路①、6.電気機器①、7.電力工学①、
8.電子工学①、9.通信工学①、10.信頼性工学①、
11.材料力学[機械系]①、12.機械力学①、
13.流体力学[機械系]①、14.熱力学・熱機関[機械系]①、
15.航空工学①、16.構造力学(土木)①、17.土質力学①、
18.水理学①、19.土木計画③、
20.環境工学(土木)・衛生工学②、
21.材料工学(材料科学)[材料物理、材料化学]①~②、
22.材料工学(金属材料)①~②、23.材料工学(無機材料)①、
24.原子力工学(原子核・放射線)①、
25.原子力工学(原子炉・核燃料サイクル)①~②、
26.船舶海洋工学(流体)[船体復原性、船体抵抗・推進、船体運動]①~②、
27.船舶海洋工学(構造)[船体強度・振動、船舶設計・艤装]①~②
(注1)11(材料力学[機械系])と16(構造力学(土木))の同時選択不可。
13(流体力学[機械系])と18(水理学)の同時選択不可。
19(土木計画)と20(環境工学(土木)・衛生工学)の同時選択不可。
(注2)1(建築設計)及び2(都市設計)は、「一般的な建築物及び都市
・地区の設計を課題とし、マスタープラン(図面及び論述)の作成により、設計する能力及び企画する能力を問う問題」。
他の選択科目は、「科目内容に応じて必要な専門的知識、技術などの能力を論述、計算等を通じて問う問題」。
【国家公務員】総合職(技術=理系職)の試験日程
最後に総合職の試験日程を紹介しておきます。
基本的には例年同じ時期に試験が実施されるため、大きく変更されることはないでしょう。
試験名 | 受付期間 | 第1次試験日 | 第1次試験合格発表 | 第2次試験日 | 最終合格者発表 | |
院卒者試験 | 3.18㈮ ~4.4㈪ (2.1㈫) | 4.24 ㈰ | 5.6 ㈮ | 5.22 ㈰ 筆記 | 6.2㈭~6.10㈮
政策課題討議・人物 |
6.20 ㈪ |
大卒者試験 | 5.24㈫~6.10㈮ 人 物 |
※スマホの場合は右にスクロールすることができます。
まとめ
総合職の技術区分は、数多くの種類に分かれておりバラエティー豊かです。
そのため、自分が学生時代に勉強してきたことに関して、その力を存分に発揮できる区分があるはずです。
総合職の技術系職員は、ゼネラリストとしての仕事はもちろん、自分が専攻していた分野の経験を活かしスペシャリストとしての働き方もできます。
専門試験などは非常に難易度が高いですが、非常に魅力のある区分と言えるでしょう。
総合職への就職を考えているのであれば、選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。
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